Technology

生体中の反応から着想を得た触媒設計

赤血球による酸素運搬

呼吸によって取り込まれた酸素は、血中に含まれる赤血球が運搬することで体全体に酸素を届けます。その時、赤血球にあるヘモグロビンというたんぱく質の中にあるヘム構造が重要な役割を持ちます。
ヘム構造の中心にある鉄原子の働きによって酸素の吸脱着を起こすことで、酸素の取り込みと放出を行っているのです。
このヘム構造の働きに注目し、酸素を効率的に還元する機能を持つ分子を設計することで、AZUL触媒は誕生しました。

炭素担体上への単分子吸着構造

AZUL触媒は、ヘムと類似の構造を持つAZUL色素が炭素担体表面に単層状に多数吸着した構造を持っています。この構造によって、ヘムでいうところの鉄原子のような触媒活性をもつ中心金属を、互いに邪魔することなく高密度に存在させることが可能となりました。

代表的なAZUL分子であるアザフタロシアニン(AZaphthalocyanine)が単分子層(Unimolecular Layers)構造を持っているため、その頭文字をとりAZUL触媒と命名しました。AZULとはスペイン語で「青」を表し、AZUL触媒の溶液も美しい青色を呈します。

 

AZUL触媒の特徴

触媒性能

電気化学反応に用いられる触媒の性能を図る指標として、電池の起電力に相当する開始電位と、出力に相当する半波電位の二つがあります。
金属空気電池や燃料電池に利用される酸素還元反応を例にとると、低価格電池に利用されるマンガン系触媒・論文等で報告されている非白金系触媒だけでなく、白金系の触媒と比較しても、AZUL触媒は開始電位・半波電位ともに高い値を示します。

低環境負荷・低コスト

白金系触媒は、採掘や精錬に大量のエネルギーが必要となるため、清算の過程で大量の二酸化炭素を排出します。
一方、AZUL色素は青色顔料として利用されているフタロシアニンと類似の構造を持ち、一般的な化学合成プロセスで製造することが可能です。そのため、白金触媒の製造と比較して、約10%のコスト、1%以下の二酸化炭素排出量で製造できる、サステナブルな触媒です。